恋はとなりに
「じゃまた来るよ。」
コウタは出て行った。
カケル君とはあの抱きしめられてるとこ見られてから話してなくて、なんか変な感じになっちゃってて。元に戻りたい。
そのチャンスがない。
窓の外を見てたら、車から降りてきたカケル君とコウタが一緒に家に入るのが見えた。
コウタは家に入る時こちらを振り向き手を振った。あたしが手を振り返す前に家に入ってしまった。
それから夏休みはコウタとほとんど毎日過ごすことになった。
家は出入りしやすいし、あたしが断ってもお母さんは家にいれるし。
あたしは夏の間、畑仕事禁止令が出たからやることなくなって時間をもて余していたのも重なり、コウタと一緒にいた。
コウタと仲良くすればするほどカケル君が遠く感じた。
実際会うことがほとんどなくなった。
たまに部屋の窓から見るくらい。夜も遅く帰ってくることが多く仕事も忙しそうだった。
しまいには9月にカケル君はとうとう会社の近くにアパートを借りて引っ越ししてしまった。
それにも気づかなくて、コウタは知ってたんじゃないかと思うけど、(本人は知らなかったって言ってる。)
誰からもその情報は入ってこなくて、カケル君は密かにあたしに気づかれることなく引っ越しを終えていた。
でも前に引っ越すと聞いたときは涙が止まらなかったけど、今回はそうでもなかった。
コウタのおかげかなって思っている。
9月に入ると大学はまだ休みだけど高校は始まる。
あたしとコウタの夏休みは終わった。
あたしはいよいよ一人になって、する事もなくなってコウタの部屋の漫画を読み始めた。
カケル君に会わなくなったから、これを機に忘れようとしていた。隣の家は今までカケル君ちだったけど、今はコウタんちって感じになったきた。
でもそれが少し寂しくて、カケル君への想いが完全に消せたわけではなくて。
コウタの学校が始まって1人の時間が増えるとカケル君のことを考える時間も増えてきた。
そしたらスッゴク会いたくなって。
会いたいっていう自分の気持ちに気づいちゃったら、もう止められなくて。
電話をかけた。
平日の昼間だったし仕事中だから出なかった。
その夜、寝る前にもう一度かけた。
やっぱり出ない。
まだ仕事してるのかな。
翌日折り返しの電話を待ってみたけどかかってこなかった。
コウタの部屋で漫画を読みながら、カケル君ちの住所の手がかりがないかちょっと探した。
コウタの部屋にはなさそうだった。
喉が渇いて冷蔵庫にお茶を取りに行った時、冷蔵庫にマグネットでメモが張り付けてあった。
カケル○○市○○町×××-×メゾン立石202
カケル君ちの住所だ!あたしは嬉しくなってポケットから携帯を取りだし写メした。
これでいける。
お茶を飲まずにコウタの部屋の漫画を片付けて自分の部屋に戻った。