恋はとなりに
悲しい気持ちでいっぱいになって家に帰った。
コウタが来ていた。コウタはうちのお母さんと話していた。
コウタはあたしを見ると無言で部屋までついてきた。
いつも着ていないワンピース姿を見られて気まずかった。
「どこいってた?」
コウタが怒り口調なのがわかる。
「カケル君ち。
カケル君女の人と一緒にいた。」
コウタはため息をついた。
「それでそんなに情けない顔してるのか。ダッセー。俺は慰めたりしないから。」
意地悪な口調。
「慰めてほしくないから。」
あたしもむきになって言った。
コウタは出て行ってしまった。
下に行くとお母さんが昼御飯の支度をしていた。
「コウタ君は?」
「帰ったよ。」
「あら、そう。」
お母さんは言った。他にも何か言いたそうな顔をしている。
「何か?」
あたしは聞いてみた。
「コウタ君と付き合ってるの?」
「付き合ってないよ。」
あたしが否定するとお母さんはがっかりしていた。
「残念、お母さんはコウタ君好きよ。カッコいいし、いいこだもの。」
「そうかな。全然カッコいいと思わない。」
あたしは反発して言った。
お母さんはそれ以上何も言わなかった。
あたしはお母さんが作ってくれたナポリタンをほおばった。
それからしばらくはメソメソしていた。大学が始まり、講義中もカケル君のこと思い出して悲しくなった。
コウタはあれから来なくなって、あたしには友達がいなくて寂しい日々が続く。
何をするのも1人。
今までは気にしてなかったけど、今は誰かにいてほしいと思うようになった。でも自分からは声をかけられない。誰に声をかけていいかわからないし。
みんな友達といて1人でいる子なんていない。
12月になり街はすっかりクリスマスモード。
ますます寂しい気がしてきた。
そんなある日、1人で学食を食べていると、向かいに人が座った。
「ここ座ってもいい?」
見ると、女の子がトレイを手にして立っていた。
「どうぞ。」
と言い終わる前にその子は席についていた。
「いつも1人でいるよね。あたし栗田桃子。名前は?」
ハキハキしたしゃべり方。通る声。
あたしと同じおかっぱ頭。でも違う。
「山口さくらです。」
「桃とさくらで気が合いそうだね。よろしくね。さくら。」
おかっぱ頭の栗田桃子ちゃんは首をかしげてニコッって笑った。
笑顔が可愛らしい。