恋はとなりに


そして、また夏が来てあたしは20才になった。

当日は家でパパとママと桃子ちゃんがお祝いしてくれることになっていた。

そしてその日、隣の家の車庫にはカケル君の車が止まっていた。

あたしは朝起きて何気なく窓からその車を見て、心が雲に覆われていくような暗い気持ちになった。


彼女を見たショックをまだ引きずっていることに自分でも驚いた。

モヤモヤした冴えない気分のまま、顔を洗った。

誕生日会は夕方からなので、日中は暇だった。

カケル君がいると思うと外に出るのも躊躇われる。





あれ?







あたしどうしちゃったんだろう。


もうカケル君に会いたいって思わない。


好きじゃなくなったんだ!



嫌いになっちゃったのかな。
会いたくないなんて。

あんなに好きだった人だけに

それはそれで寂しい気がする。





好きじゃないなら会っても平気なんじゃないのかな。


でも会うのは怖い。


ん?怖いって?





あ、わかった。


彼女を見るのが怖いんだ……。

また傷つくから。せっかく治りかけた傷をえぐられるような気がして。


自分の気持ちが見えてきて、複雑な感情に縛られていく。


着替えるのも躊躇う。着ようとしていたワンピースを着る気になれなくて普段着に袖をとおした。


浮かれてたら、また地に落とされるような気がしてならない。

午前中はウダウダして過ごした。

午後はウダウダしているのも疲れて面倒くさくなって、開き直った。

部屋の窓からカケル君の車を確認して、隣の家に乗り込む覚悟を決めて深呼吸した。


そして玄関を飛び出して、隣の敷地に入った。


インターホンを鳴らそうとした手が止まった。



用事がない。



コウタとは話してないし。

おじさんおばさんとも、最近はあんまり話してないし。
カケル君に会いに来た的な感じを出す元気もない。






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