恋はとなりに
講義のあとお昼ご飯を一緒に食べた。外のベンチでサンドイッチを買って食べた。
「さくらちゃんは彼氏、いないの?」
緊張している様子の河瀬君が聞いてきた。
あたしは河瀬君に話しかけられるまで、河瀬君といることを忘れていて、隣にいるのもカケル君だと思っていた。
だから違う声に少し驚いた。
あ。そうだ。カケルくんじゃないんだ。河瀬君といるんだった。
「いないよ。河瀬君は?」
「いないよ。」
「どれくらいいないの?」
「1年くらい。」
「ふぅん。1年か。」
「さくらちゃんは?」
「あたし?あたしは 付き合ったことないんだ。」
「え。」
河瀬君はひどく驚いているみたい。
「あ、だからこうやって男の子と2人でお昼食べるのも初めてかも。」
と言ってあたしは笑って河瀬君を見た。
でも河瀬君は笑ってなかった。
眉間にしわを寄せて悲しそうな、怒ってるような。顔をしていた。
「河瀬君?どうしたの?あたしなんか言った?」
河瀬君は立ち上がった。
「ごめん。」
と言って頭を下げてきた。
きれいなお辞儀だった。
「俺、嘘ついた。1年前彼女いたって言ったけど、本当は俺も彼女いたことないんだ。ごめん。ついつまらない見栄張って。。。」
あたしはあっけにとられた。でもすぐにっこり笑って
「じゃあ河瀬君も付き合ったことないってこと?仲間だね。」
と言った。
河瀬君も笑った。
「嫌いになった?ウソつくなんて最低だろう?」
河瀬君はベンチに座りうなだれた。
「すぐ謝ってくれたから、そんなに気にならないよ。それに付き合ったことなくてよかったって思ってるし。」
あたしの言葉に河瀬君は顔をあげた。
「本当?」
「うん、あたしも恋愛経験ないから、仲間がいて嬉しい。あんまりいないもんね。」
「うん。そうなんだよ。俺の周りにもいなくて。かっこわるい気がして。ついウソを・・・。」
と言ってまたうなだれた。
そこに桃子ちゃんがやってきた。
「桃子ちゃん。」
「こんにちわ。仲良いねぇ。」
「お昼食べてたの。桃子ちゃんも一緒にどう?」
あたしは端によけて、桃子ちゃんは真ん中に座った。
「悪いね。さくらがいないからさみしくて。彼氏、いつの間にできたの?!」
桃子ちゃんは買ってきた袋から焼きそばパンをだして食べた。
「彼氏じゃないよ。」
あたしと河瀬君は声をそろえて否定した。
その様子をみて桃子ちゃんはうんざりした顔をした。
「息もぴったりで。いいわねぇ~。」
皮肉たっぷりに言った。