恋はとなりに
電車をおりるまで手をつないでいた。
改札を出るとき、あたしはコウタの手をすり抜けるように繋いでいた手をほどいた。
なんだかドギマギしていた。
こういうのってへんな感じ。
駅を出たら、コウタはまたあたしの手を取り繋ごうとした。
「やめて。」
あたしははっきり言った。
立ち止まって、コウタを見上げる。
コウタは無表情、あたしを見下ろす。
「何がやなの?」
「コウタと付き合ったりしない。手も繋がない!」
コウタの表情はみるみる雲っていった。
今にも泣き出しそうな顔をしている。
とたんに強く言ったことを後悔した。
「強く言い過ぎた、ごめんなさい。」
と、言ってあたしはコウタを置いてけぼりにして歩きだした。
コウタは追いかけて来なかった。
一人で家に帰ってきてしまい、コウタのことが気になった。
部屋の窓からコウタの家の玄関を見ていた。
あたしが帰ってから30分経ってもコウタは帰って来なく、あたしは家の外に出てみた。
駅の方面をみたけどまだ姿は見えない。
気になって電話してみたけど出なかった。
駅の方に向かって歩きだした。
すると暗がりから、男の人影が見えてきた。
「コウタ?」
と聞くと
「ちげーよ。俺だよ。」
と怒り口調のカケル君だった。
「カケル君、コウタ見なかった?」
「見てないよ。なんで?」
な ん で ?
答えるべきなのだろうか、迷った。
が、洗いざらい話した。
「そっか。コウタは大丈夫だよ。帰ってきたら連絡するからさくらは家に帰りな。」
カケル君はいつもの優しい口調になっていた。
「友達のところにいってんだと思う。」
と、笑って付け足した。
あたしは、少し安堵して家に帰った。