恋はとなりに
でも家に帰ると、工藤のことは忘れてさくらのことを考えてしまう自分がいた。
さくらは相変わらず俺の前に現れては、アニキのことで浮かれている。
それが俺をイラっとさせた。
そして俺も相変わらず、意地悪を言っていた。
おれの男友達は部活していたり、塾に通っていたからあんまり一緒に帰ることがなくて、
自然と工藤と帰ることが多かった。
そして7月。
工藤に
付き合ってほしい
と言われた。
おれは何も考えずオーケーした。
工藤は可愛いし、スタイルもいいし、性格もいい。完璧。
頭もいいし、何度も助けられた。
帰りに一緒に図書室で勉強したりする。
進学校ならではのデートってところだ。
でも夏休みに入ると
隣のさくらは畑仕事をしに毎日うちの前を通る。
なんとなく見つけてしまって、目で追っていた。
工藤と比べたら、さくらの方が劣っていることが多い。
顔もスタイルも勉強も、性格はさくらもいいけど、なんか子供っぽいし。
工藤の方が大人なんだよな~。
でもさくらが気になる。
高校1年の夏は工藤と過ごすことが多かった。クラスの友達と遊んだり
講習に出たり、充実した高校生活を送っていた。
工藤は付き合いだしても、友達の時と変わらなかった。
変わったことと言えば、学校帰りは手をつながないけど、
休みの日のデートのときは手をつなぐようになったこと。
工藤は奥ゆかしいというか、あまり自分を出すタイプではなかった。
やさしくそっと近くにいるような。
そんな感じ。
本当はもっと違うんじゃないかな
俺に遠慮しているんじゃないかな
って思うこともあったけど、
それはそんなに気にならなかった。
工藤のやりたいことはなるべく叶えてあげたいと素直に思えた。
「今日は友達と帰るの?一緒に帰れる?」
工藤が一緒に帰りたいときはいつもこうやって聞いてきた。
俺から帰ろうっていうときもあった。
そういうとき工藤は俺を優先させて友達との約束を断っているようだった。