恋はとなりに
アニキは弟の俺からしても、優しいしカッコいい。
でもなに考えてるのかいまいちわかりずらい。
恋人と長く続かないのも、不思議だし。
1年も続かない。
それでも彼女ができると、ちょくちょく家に連れてくるのもなんだか不思議。
すぐ別れるなら連れて来なきゃいいのに。って俺は思う。
最初の二人目くらいまでは、連れてきてもいいけど。
3人目からは、
正直、親も俺も「またか。」って思っていた。
そして、同じ彼女が2回来ることはない。
アニキはさくらを好きで、でも忘れたくて彼女をつくったり連れてきたりしているのだと思っていた。
本当のところはよくわからない。
さくらに意地悪なことを言ってしまうのに、悲しい顔をされると気になって気になって、
学校でも上の空だった。
当然工藤は俺を心配してくる。
工藤が心配そうに俺の顔をのぞきこむ。
でも何も言えない。
コンビニでプリンを買ってお昼のデザートに食べていた。
教室で食べていた。
向いに工藤がいる。
工藤はやっぱり心配そうに俺のことを見ていた。
さくらのことを気にしている時に、工藤に心配されてもどうしていいかわからず、
「なんでもないから。」
と言って笑ってごまかすしかなかった。
すぐ別れればよかったものを、
そうやって自分の気持ちをかくしてずるずる関係を続けてしまった。
工藤は気付いていたに違いない。
俺の気持ちがここにないこと。
頭のいい工藤がそんなの気付かないわけがないのに。
高1のクリスマス
工藤とデートをしていた。
映画を見て、横浜の赤レンガを歩いた。
日もくれそうだから帰ろうって言ったら
工藤はまだ帰りたくないって言った。
ここから家まで2時間かかる。
2時ごろお昼を食べたから夕飯にはまだ早くて。
俺はクリスマスだし、工藤のこと喜ばせたいという気持ちと
さくらのことを忘れたい気持ちでいっぱいだった。
横浜に来たのもそのためだ。
ちょっと遠くに来た方がお互い向き合えると思った。
横浜はすごい人混みで、日が暮れるにつれて人は増えていった。
こんなに、遠くにいて、隣に可愛い彼女がいるのに、
さくらへの想いは余計に募るみたいだった。
遊園地の乗り物にいくつか乗った。
川沿いの遊園地、イルミネーションがきれいすぎて見とれてしまい、宙に浮いたような気分になった。
クリスマスムードは満点で舞い上がって隣を見ると
そこには工藤がいた。
俺は工藤を見て現実に引き戻された。
「工藤、もう帰らないと、電車なくなる。」
もう俺たちのクリスマスも終わった気がした。