恋はとなりに
「今日はありがとう。」
駅から工藤の家まで一緒に歩いた。
家の前に来ると、
「今日は横浜に行けて嬉しかったし、楽しかった。
でも鈴木君はあたしといて楽しい?なんか最近ずっと変だし。
あたしわかんなくて、
聞いても答えてくれないし。
鈴木くん他に好きな人いるんじゃない?」
工藤は興奮しているみたいに、一気に喋った。
俺は呆気にとられた。
他に好きな人イルンジャナイ?
当たってる。
当てられると、隠したくなる。
「いないよ、好きな人なんて。」
とりあえず否定した。
「今日は楽しかったよ。」
と言って俺はポケットから用意していたプレゼントを出した。
「これ、一応。クリスマスプレゼント。」
リボンのついた小さい箱を震える手で、工藤は受け取った。
「あ、
ありがとう。」
小さな箱を握りしめたまま見つめていた。
「バイトもしてないから、安物しか買えなかったんだけど。よかったら使って。工藤似合うと思う。」
工藤は握りしめたまま動かない。何か考えているのか、俺にはよくわからなかった。
工藤の家は田舎でも町の中心部にあって駅もコンビニも近くにある。比較的都会。家は昔ながらの作りで祖父母と同じ敷地内に住んでるらしかった。
俺の駅から3つ離れた駅。
体が凍えそうに寒くて耐えられず、
「家に入りなよ。風邪ひくよ。また、月曜。」
と言って、その場を立ち去ろうと踵をかえした。
「す、鈴木君!!」
工藤は俺の前に飛び出してきた。
「あたしもプレゼント用意したの。もらって?」
長い髪をいつものようにポニーテールにしている。
制服のスカートも膝下で規則正しい、工藤は私服のスカートも膝下。
いまどきとは言えないところも好感が持てた。
大きなリュックを背負ってると思ったら、それに見合った大きさの紙袋が出てきた。
「これ。いらないかもしれないけど。」
「ありがとう。」
俺は受け取ってすぐ袋の中身を見た。
袋の中には、ラッピングされた箱が入っていた。
袋の中に手を伸ばすと、目の前の工藤が「あ!」と声を上げた。
「なに?」
「家であけて、なんか恥ずかしいから。別に捨ててもいいの。ほんの気持ちだから。
じゃあね。また学校でね。」
工藤はそういうと走って家に帰った。
俺も駅まで走った。