恋はとなりに
家に帰ると、プレゼントの紙袋ごと部屋のベッドに放り投げた。
台所で夕飯の残りを食べた。
なんだかお腹がすいた。
なんだか疲れた。
工藤からのプレゼントは丁寧にラッピングされた箱に入れられてかしこまって並んでいたクッキー。
とマフラーだった。
グレーの無地のマフラーで気に入った。
クッキーはおいしかったけど、甘いものあまり好きじゃなかったから一枚食べてやめた。
マフラーが手編みじゃなくてよかった。
と少しほっとした。
でも、やっぱりプレゼントは気持ちが重くなるのを感じた。
冬休みなのに、電話もメールもしなかった。
友達と遊んでばかりいた。
さくらはたまに会ったけど、相変わらずアニキを追っかけているようだ。
正月になると、ようやく工藤からメールが来た。
あけましておめでとう
というシンプルなものだ。
わかっている。本当はプレゼントの感想を聞きたいはずだってこと。
わかってるけど、そんなに気をつかえない自分がいた。
無難な返信をしといた。
学校が始まったらマフラーを使おうかどうしようか迷っていた。
でも、始業式の日俺は工藤にもらったマフラーをつけて学校に行った。
工藤に会うと目くばせした。
工藤は恥ずかしそうにうつむいて走ってどこかへ行ってしまった。
でも、それから一週間後。俺はいつものように工藤と一緒に帰っていた。
別れ際、工藤はいつもと違う様子でうつむいた。
意を決したかのように俺を見つめる。
「鈴木くん。もう別れたい。わたし、付き合うならお互い向上していけるような関係でいたい。
でも鈴木くんといるとあたし、苦しくて自分のことも鈴木くんのこともわからなくなっておかしくなりそうなの。
だからもう別れたい。」
急なことで、呆然としてしまった。
「クラスも一緒だし、これからはいいお友達になりましょう?」
工藤は言った。
清純で奥ゆかしいはずの工藤が小悪魔に見えた。
「あ。ああ。わかった。ごめんな、なんか俺・・・。」
俺が言うと工藤が食い気味でしゃべりだした。
「工藤くんは悪くないから。あたしが自分で決めたことだから。そのマフラーよかったら使って。それじゃまた学校でね。」
工藤は言いながら足早にかけていった。
工藤は賢い。正しいと思うよ。本当に。
俺は工藤にもらったマフラーを駅のごみ箱に捨てて帰った。