恋はとなりに
高校2年のゴールデンウィーク初日は、
たかしのうちに遊びに来ていた。
たかしに上田と付き合うことになったと報告したら
羨ましがっていた。
でも俺はちょっと面倒だから二人きりになりたくなくて困っていた。
ただの友達の時はよかったけど、女を出してこられると面倒になる……。
「コウタって変わってる。
他に好きな子でもいるの?」
不思議に思ったたかしが聞いてきた。
核心を付かれて、俺は動きが止まった。
持参したペットボトルのお茶をごくりと飲んだ。
たかしは「いるんだな!」
と、鬼の首でも取ったかのような言いぶりで
「誰と付き合うのもいいけどさ。好きな子いるなら、断るべきだろ!」
と、もっともな意見を述べた。
熱くなっているたかしをまずはなだめた。
「いるんだけど、失恋してるから。忘れたいっていうのもあるんだ。」
しんみり話すと、たかしも落ち着きを取り戻してきた。
俺は続けた。
「でも、よくないよな。明日上田に断るよ。気持ちがないから付き合えないって……正直に。」
と言って立ち上がり、たかしの部屋のCDを物色し始めた。
「いや、俺はさ。男女のことよくわかんねえし。上田と付き合って忘れられるならそれでいいと思うよ。
ごめんな、何も知らないで強く言って……。」
たかしは照れ臭そうに言った。
「そんなのいいけど、このCD貸して。」
俺は気になってたCDを2枚持って帰った。
翌日は、宣言通り上田に連絡した。
上田んちの最寄り駅に呼び出した。ちょっと話があると意味深の言い方をしたつもり。
突然の呼び出しにもかかわらず、上田はデートって感じの気合いの入った服装に俺はちと引いた。
駅前の一軒しかない喫茶店に入った。
「嬉しい、誘ってくれて。」
上田はニコニコ本当に満面の笑みを浮かべて見つめてくる。
「あんまりいい話じゃないんだ。」
「え……。なに?」
みるみる顔色が曇る。
そこへコーヒーが2つ運ばれてきた。
「やっぱり上田とは付き合えない。ごめん。気持ちがないのに付き合っても、悪いし。」
上田は俺をガン見している。
睨み付けているって言った方がいいかな……。
穴があきそうだから俺は目をそらした。
上田は睨み付けたまま聞いてきた。
「他に好きな子がいるの?」
俺は首を横に振った。
すると上田は手のひらを返したように上目使いになって
「じゃあ気持ちがなくてもいいから、付き合って。
あたし、コウタ君じゃないとダメなの。」
そんなに急に切り替えられる上田が怖かった。
と、同時に痛々しく思えた。
『コウタ君じゃないとダメ』
俺とおんなじだ。俺はさくらじゃないとダメ。
俺が上田なら、チャンスが欲しい。無理でも受け入れて欲しい。そんな気持ちな気がした。
「うまくいくかわからないと思うけど、付き合ってみる。」
俺は上田にそう告げた。
上田に笑顔が戻った。
こうして結局付き合うことになった。