恋はとなりに
「別に、ないよ……。」
って言うか行きたくない。
全然楽しみじゃない。
河瀬君は行きたいのかな。行きたくないよね?行く気あるのかな。
あとで断ろうかな。
その日家に帰ると、お母さんが嬉しそうに開口一番
「さくら。お父さんとお母さん来週から旅行に行くから、留守の間よろしくね。女の子1人じゃ心配だから、お隣にお世話になってて。お願いしといたから~。」
と鼻歌まじりに告げられた。
「え、どういうこと?!」
一応もう一度聞いてみた。
お母さんは煩わしそうにでも笑いながら答えてくれた。
「だーかーら、隣のお宅、カケル君の部屋空いてるから、3ヶ月カケル君の部屋で寝泊まりしてね。その方が安心でしょ。」
聞いてるうちに、血の気が引く思いがした。
隣に住むってことか……
コウタ。いるよね?
なんか気まずい。
「ちょっと待って!旅行っていきなりどうして?」
あたしが聞くとお母さんは嬉しそうにニターっと笑った。
「お父さんが、結婚記念日に船の旅プレゼントしてくれたの~!だから、よろしくね。コウタ君にこの家に用心棒として来てもらってもいんだけど。さくら、家事できないでしょ。」
お父さんとお母さん。来週からいないのか……
それはどうにもならない事実みたいだけど。
あたし、1人で平気、……とは言い切れない。
でもお母さん、あたしとコウタ。付き合ってると思ってるのかな。
「でも、お母さん。あたし、1人で平気だよ。家事もやってみるし。」
と言ってみた。
「何かあったら隣におばさん頼ることになるけど。」
と弱気に付け足した。
「もう、無理しないで。あなたは勉強に専念しなさい。」
と、あたしを置いてきぼりにして旅行に行くお母さんは勝手なことを言ってると思ったけど。ケンカしたくないので黙っておいた。
そしてあたしは翌週からコウタの家で暮らすことになった。
この前告白された人と一緒に住むって、なかなかファンキー。