恋はとなりに
同居
月曜日の夕方、お父さんとお母さんを鈴木家から見送った。
「今日からよろしくね。」
荷物を置いて、隣の部屋にいるコウタに改めて挨拶をした。
会うのはあの日以来。
コウタは昔のコウタみたいに不機嫌そうに返事をした。
それを見てあたしは、可愛いげのない弟だと思っていた頃を思い出した。
「ねぇ、この前の子。彼女?」
久しぶりに会ってぶっきらぼうなコウタに親しみを覚え少しからかいたくなって聞いてみた。
「違うよ。学校の友達。」
コウタは机に向かいながら、さっきより素直な話し方になって答えた。
「あたし、実はね……。」
と、切り出したものの言うのを躊躇った。
コウタはチラリとこちらを向く。
「実はってなんだよ、言えよ。」
あたしはベッドに腰掛けた。
「あの時、コウタと付き合おうと思ってたの。それを言いたかったんだけど。コウタは話してくれないし、綺麗な子連れてるし。」
コウタはこちらを見て何か言いたそうな顔をしてるので、あたしは話を止めた。
「なに?」
「な、何で今頃 そんなこと言うんだよ。」
コウタは悲しそうに言った。
「何でって、今まで会わなかったから。それにもう気が変わったから。」
コウタの表情がみるみる曇った。
「お前って、残酷……。」
コウタはあきれたような悲しそうな顔をしてそう言うとまた、机に向かった。
「……!!
残酷ってあたしが?」
コウタから思いもよらない言葉を言われ絶句した。
「コウタなんかいつもあたしにひどいこと言ってきた癖に!」
と言ったところで、コウタは横向きだけどしんみりしているように見える。
「コウタ……傷付いた?ごめんなさい。でもおあいこだよ。」
と言ってあたしは部屋を出た。
初日からこんなんで身がもつかな。
なんかへビーかも、この同居。