恋はとなりに
でもやっぱり行きたくなくて、翌朝佐藤くんに電話した。
「やっぱり今日は行けない。ごめんなさい。」
「わかった。急に誘ってこっちこそ悪かった。じゃあまた学校で。」
と好青年を感じさせる返事だった。
胸がズキッと痛んだ。
清香ちゃんにもメールで謝った。
夜は家族とベランダで花火を見た。
隣のバルコニーに鈴木家が花火見てて、一緒に見ようってことになって。我が家は鈴木家にお邪魔した。
鈴木家のバルコニーの方が広いから。
そして両親たちは宴会を始めた。
幸いカケル君はいなかった。コウタも友達と見に行ったらしい。
こんなに切ない花火大会は初めてだと思いながら花火を見ていたら
「あれ?行かなかったの?」
突然すぐ横にカケル君の顔が現れた。
「行けないよ。」
驚きながら答えた。
「行ったら後悔しそうだったから。」
付け加えた。
「そっか。」
それからカケル君の横に並んで静かに花火を見ていた。あたしには幸せな時間だった。