恋はとなりに
あたしはコウタを見上げた。
もうムスっとはしてなくて、口元にイタズラな笑みを浮かべていた。
「何で女の子泊めたの?」
あたしが聞くと
コウタはまたムスっとした顔に戻った。
「それはさ、さくらに酷いこと言われてムシャクシャしてたかしにラインしたり、ランニングしたりしてたら。あいつに会って。帰りたくないって泣くから泊めた。」
「え、そんな理由?けっこうガッカリ。」
「いや、そういうことするコじゃないから。人前で泣いたりしないし。帰りたくないとか言うコでもないし。なんかよっぽどのことがあったのかと思ったんだよ。そもそもあんな時間に出歩かないし。」
「そ、大体わかった。」
その時ホームに電車が来た。
「あ、電車来たからまた後でね。」
と、乗ろうとしたところ
腕を引っ張られ、振り向くとコウタの腕の中に収まった。
「離して。」
言いながら小さくコウタの胸を叩く。
発車のベルが鳴るとコウタは離してくれた。あたしは無事に電車に乗った。
電車の中からコウタを見る。
コウタはニコッと笑って手を振った。あたしは困って拳を作って小さく窓にぶつけた。
なんなの、コウタって。
学校で桃子ちゃんにその事話したら、笑って聞いているだけだった。
「コウタってわかんないんだけど、嫌いじゃないね、あたしは。」
と、最後に言った。
その日の夕食の時おばさんが
「明日、あたしとお父さん群馬のお姉さんちにいかないといけないから。二人で留守番よろしくね。ご飯作っておくから。」
「はい。」
と返事をしたものの、心の中では
え、えー!!!
コウタと二人きり?!
あたしは内心ドギマギしていた。
「おばさんどうかしたの?」
コウタが冷静に聞いている。
「おばさんぎっくり腰になっちゃって動けないから。それで週末だけでもお手伝いに行くの。」
「ふうん。」
コウタはそっけない返事をして、自分の部屋に戻った。
明日か……。
とりあえず明日は畑に水やりに行かないとな。