恋はとなりに
新学期が始まった。教室に入って最初に佐藤くんと目が合った。
でもすぐそらされた。
これでよかったんだ!って思った。
あたしは隣のカケル君一筋。
妹作戦は今のところ順調で。カケル君はあたしの気持ち気づいているのかいないのか、あたしがもう少し大人にならないといけないなって勝手に考えてて。
今は大学受験を控えているから、勉強頑張らないと。カケル君と同じ大学行くんだもん。
行ってもカケル君はいないけど。
カケル君と同じ理数系に行きたいから、文系の脳ミソねじれそうになりながら勉強してる。
でも計算が苦手。
カケル君が通った大学に行きたい、カケルが受けた講義受けたい。共通の話題ができる。
そして就職も同じ会社に行きたい!
と、あたしは燃えていた。
でもな、同じ会社に入ったらカケル君の彼女とか間近で見ることになりそう。
でもそばにいたい。それだけ。
あたしの太陽。
カケル君がいないとあたしの世界は真っ暗になってしまう。
冬になると、カケル君は内定もらえたらしく。夜な夜な遊びに出かけていた。遊びかバイトかよくわからないが。
コウタも知らないと言っていた。
カケル君はこの町で知らない人はいない大きな会社に就職が決まったみたい、両親たちが嬉しそうに話ていた。
駅でカケル君に会った。同じ電車だったらしく、家までの道を二人で歩くことになる。
夜な夜な出かけてどこに行ってるのか聞いたら。
「バイトしてんだよ。会社までちょっと遠いから引っ越そうかと思って、その資金稼ぎ。」
カケル君の言葉にあたしは血の気が引いた。
あたしの太陽がいなくなっちゃう事実を受け止められなくて取り乱した。
「引っ越し?!ウソでしょ?!ウソでしょ!家出るの?いなくなるの?やだやだ。カケル君がいなきゃ、あたし。」
あたしは泣き出した。
カケル君はあたしの肩を抱き寄せてくれた。
「そんな大げさだなあ、さくらは。そんな遠く離れるわけじゃないし。電車だったら1時間もかかんないよ。車だったら30分くらいで着いちゃうから大丈夫だよ。」
そして頭を撫でられ、あたしは心が落ち着いてきた。
カケル君はいつになく優しく慰めてくれた。
でも、悲しかった。
家までの道をとぼとぼ歩いた。
「妹でも何でもそばにいるだけでよかったのに、それも叶わないなんて。」
あたしは放心状態で家にたどり着いた。
隣にいるのが当たり前になっていた。
でもカケル君だっていずれ出ていく日がくるよね。
でもいなくなるって聞いたら涙が出てきてワケわかんなくなっちゃった。
イッケナーイ。妹に徹してたのに。あたしとしたことが取り乱すなんて。
でもカケル君、優しかった。
いつになく優しかった。
あんなに、大きくてあったかい手だって知らなかった。
あたしとは違うカケル君は男の人。
改めて感じた。
でもいなくなったらやっぱり悲しい!
あたしは隣の家の子ってだけで、友達でも何でもないし。
弱い立場を痛感した。