恋はとなりに
工藤はいつもと違う雰囲気だった。
「どっかで話す?」
俺もどうでもよくて、工藤はちょうどいい話し相手に思えた。
「鈴木君ち行こう。今日は帰りたくないから。」
雰囲気の違う工藤は、いつも言わないような事を言ったけど、今はそれも気にならなかった。
言われるまま、家に向かった。
帰りたくないなんてなんかあったのかな、
でもわざわざ聞くこともないか……。
家に着くと、アニキの車があるのも気づかなかった。
こそこそと部屋に入った。
みんな寝ているらしく家の中は静まり返っていた。
明るいところで見たら、工藤の雰囲気が違うのも納得出来た。
ミニスカートを履いていた。
髪もおろしている。
「髪、いつもと違う。なんかあったの?」
つい聞いてしまった。
大して興味もないくせに。
工藤は、何もないと言って、ベッドに潜ってしまった。
俺もそれ以上詮索はせず、沈黙が続いた。静かで耳鳴りがしてきた。
まぎらわせるために部屋のテレビを付けた。
すると、工藤が口を開いた。
「鈴木君こそ、なんかあったの?彼女とケンカでもしたの?」
工藤は布団から顔だけ出して俺を見てる。
「彼女なんかいないよ。好きな人に告白したらフラれた。」
俺は感情を込めないで話した。
「鈴木君、ふるなんてどんな人なの?学校の子?」
工藤は俺をふった相手に興味津々だった。
俺がフラれて傷心なことはどうでもいいらしい。
「学校の子じゃないよ。」
とだけ言っておいた。
「あたしと付き合ってた時も、その子のこと考えてたんだよね?」
工藤の言葉にゾクッとして、工藤を見た。
なんか恐かった。
「そんなことないよ。あのときは自分の気持ちがよくわかってなくて……。」
俺の言葉に工藤は納得したように何回か頷いた。
「鈴木君って、好きな人いるのに何で好きじゃない子と付き合うの?」
工藤の声は怒りを含んで少し大きくなっていた。
「言ったんだよ。上田の時は、好きな人いるって。それでもいいって言われて。」
工藤はまた、頷いた。
「それでもいいって言われるなんて、鈴木君すごいね。その子の気持ち、あたしにはわからないけど。」
工藤は冷めた目をして言った。
いつもと違う工藤と話してて、調子が悪くなった。
が、失恋した痛みは和らいだようだ。
気が紛れた。と表現した方が正しいかな。
工藤も俺もいつの間にか寝ていた。
そして朝、さくらに起こされた。