恋はとなりに
家に帰るとシチューのいい香りが家中漂っていた。
そういえばカケル君さっき何か言いかけてたな。
と思いだし、カケル君のいるキッチンへ入った。
「いい匂いね。」
「さくら、どこ行ってたんだよ。」
「あ。」
彼氏が出来たこと言った方がいいのかな……。
「あ?」
カケル君が聞き返した。
「あたし、彼氏出来た!」
あたしの突然の発言にカケル君は持ってたお玉を落として、シチューが飛び散った。
「キャー、大丈夫?」
あたしはキッチンペーパーで壁に付いたシチューを拭きながら聞いた。
カケル君も落としたお玉を拾った。
「驚かせるなよ。なんだよ、急に。彼氏出来た?いつ?」
「今だよ。河瀬君に呼び出されたから行ってみたら、告白されたの。それで、付き合うことにしたんだよ?なんか変?」
「河瀬かぁーあいつ良さそうな奴だもんな……。びっくりしたよ。さくらに彼氏か。」
床や壁を拭き終えてカケル君に目をやると、カケルがシチューに醤油を大量に入れようとしていた。
「カケル君!!」
「え、なに?」
「醤油、入れすぎじゃない?」
醤油を計量カップに溢れさせていた手が止まった。
「あ………………りがとう。教えてくれて。隠し味に入れるはずが、これじゃ醤油味のシチューになるとこだった。」
我にかえったカケル君は醤油をちょっとだけ鍋に注いだ。
「でもさ、付き合うって何するの?」
「何もしなくてもいいんだよ。一緒にいればさ。」
「あたし、河瀬君のことずっと友達だと思ってたの。」
「それが何?」
「付き合ったら急に手とか繋いだりして、距離が近くてスッゴい変な感じがする。」
「それはさー、距離はゆっくり縮めないと急ぐとロクなことないよ。」
「そうだよね。やっぱり経験豊富な人は違うね。参考になる!」
「そうだろ?俺に何でも聞いてくれ。」
「あ、そういえば。カケル君あたしに何か言おうとしてたよね?」
「え、そうだっけ?」
「出掛ける前。さくら、俺さ……って言ってたよ。なんだったの?」
「えー思い出せないから大したことじゃないんだろう。」