恋はとなりに

お風呂から出ると、コウタがリビングのソファーに座ってテレビを見ていた。

「さくら、面白いのやってるよ。」

と、言われたけど。

「河瀬君に連絡しなきゃいけないんだ。」


と、仕方なしに断って部屋に入った。


携帯を見つめて、河瀬君に電話した。

ワンコールで河瀬君は出た。まさかずっと待ってたのかな……?


「あ、お風呂でたの?」

河瀬君の第一声。

「でたよ。」

「よかった~忘れられてるかと思った。」

興奮気味の河瀬君の声

「遅かった?ごめん。」

「いや、なんかもうドキドキが止まらなくて。なんかなんかなんか嬉しいけど、実感もあまりなくて。ほんとは今すぐ会いに行きたい!」


「そうか……落ち着いて、河瀬君。」

「うん、落ち着きたいけど。嬉しすぎてさぁ、もう。あ、そうだ明日も会える?ちょっとでもいいからさぁ。どこでも駆けつけるし。」

河瀬君が落ち着くことはなかった。

友達同士の時はとっても落ち着いた人だと思ってたのに。


ほんとはこういう人だったんだ。


明日少し会う約束をして、眠いと言って電話を切った。


河瀬君があたしのこと、そんなに好きだったなんて全然気づかなかったな。

あんな熱い思いをどこに隠してたんだろう。
そんな雰囲気微塵も見せなかったのに。


喉が渇いたので下に下りた。


麦茶を入れて、コウタの隣に座った。


ホッとした。


「彼氏と電話したの?」

コウタが聞いてきた。

「したよ。」

「さくら、なんか疲れてない?」

コウタに気づかれた。テレビからコウタに視線を移した。

「うん、温度差があるから疲れるかも。テンション高くて。前はあんなんじゃなかったのに。」

「よっぽど嬉しいんだな。」

と言ってコウタはテレビを見て笑っていた。


あたしはコウタの横顔を見ていた。


コウタってもうあたしのこと好きじゃないのかな。

聞きたくなったけど、聞いても仕方ないからやめた。


彼氏ができたら急に優しくなるなんてどういうこと?



理解に苦しむ。





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