眼鏡越しの恋
水泳と彼
「祥子っ、早く!いい場所、取られちゃうよ!!」
担任の先生が帰りのHR終了を告げたと同時に、美香が勢いよく駆け寄ってきた。
どれだけ素早いんだ・・・と思いながら、私も美香に急かされるまま、早足で教室を飛び出した。
なんで、こんなに慌てなきゃいけないんだ?
私は走るスピードを緩めない美香に手を引かれながら、疑問が湧いていた。
今、私は水泳部が練習を行うプールへ向かっている。
インタビューをさせてもらうんだから、1回くらいは瀬能君の泳いでいる姿を見ておいた方がいいのかなと思って。
でも一人で行くのは気が引けたから、美香に一緒に来てもらうことにした。
もちろん、今まで水泳部の見学なんて行ったことがない。
美香は時々、瀬能君を見に行っているらしいけど。
美香みたいに、瀬能君目当ての女の子が毎日プールに押し寄せているって話も知っていたけど。
まさか、ここまでとは思わなかった。
うちの高校の水泳部は強豪らしい。
今までも県大会はもちろん、全国大会でいい成績を残した先輩も結構いる。
だから熱の入れようも違う。
学校としても、そんな水泳部への対応はいいから、設備もしっかりしていて、水泳部の使っているのは雨だって練習のできる屋内プールだ。
屋内プールの二階は、上からプールが見渡せるようになっていて、そこにはすでにたくさんの女の子達が集まっていた。
その数の多さに、私はびっくりして思わず立ち止まって唖然とした。
コレがみんな瀬能君ファンなんだろうか?
やっぱり、恐るべし瀬能匡。
そう思ってボーっとしていた私を美香が大きな声で呼んだ。
「祥子、ここ、ここ!!」
ちゃっかり最前列のプール全体が見渡せる場所を陣取った美香が私を手招きする。
私は呼ばれるまま、美香の隣へ立った。