眼鏡越しの恋

No.3 心配性



いつのも朝。
いつもの登校風景。


その筈なのに・・・いつもは有り得ない周囲からの視線を感じるのはなぜだろう?


私は校門に近づくにつれて居心地の悪さを感じていた。


さっきまで、今日はいいお天気だと気分がよかったのに。


「あ、祥子おはよ」


昇降口の下駄箱で美香がいて、声を掛けてくれる。
それにホッとして私も「おはよう」と返事をした。


「うわぁ、その銀縁眼鏡、やけに似合ってるね」


美香は目敏く私の代替えで掛けている昨日借りたばかりの眼鏡に気付いてニヤッと笑った。


「そうかな?」


似合っていると言われて嫌な気はしないけど、『やけに』と言った美香の言葉が引っかかる。


「うん、なんかエロいよ」


「はっ?」


ニヤリ顔のままの美香が言った台詞に私は眉を寄せて怪訝な顔をした。


そう言えば・・・匡も昨日そんなことを言ってたけど。
エロいってなんなんだ!?


「まぁいいじゃん。似合ってるってことよ」


顔を顰める私に美香は可笑しそうに笑って、フォローなのかどうかわからない言葉を続けた。


2人一緒に教室まで向かう。
その間にも感じる周囲からの視線。


隣に美香がいてくれるからさっきよりは気持ちが落ちることはないけど、やっぱり気分のいいものではないな。


「ねぇ、みんなすごいね。祥子に興味津々だね」


隣を歩く美香が面白そうに小声で耳打ちする。
美香もやっぱりこの視線の雨に気付いているみたいだ。


でもどうしてそんなに面白そうなんだろう?


「・・・私に興味津々ってなんで?」


昨日まで“残念”な私のことを気にする人なんて誰もいなかったのに。


そう訊ねると美香は呆れたように溜息を吐いた。


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