眼鏡越しの恋
「なぁ、宮野!コンタクトにしないのか?絶対そっちの方がいいのに!」
騒ぐ女子達の間から男子にまで声を掛けられて、さらに動揺が膨れた。
「無理無理。瀬能君がそんなこと許すわけないじゃない」
「ちょっ、美香」
私の代わりに美香が答えてくれたけど、その台詞に私はびっくりして声を上げた。
当の美香はしらっとした顔をしている。
「何か間違ったこと言った?」
そう言い返されれば、確かにそれも理由の一つだから反論できない。
でも、別に匡に眼鏡を強制されているわけではない。
眼鏡を掛けているから、外すなって言われているだけで。
コンタクトにしないのは、私の意思だから。
「・・・瀬能かぁ。アイツ宮野の素顔のこと知ってて隠してたんだもんな。狡いよなぁ」
「はぁ?それは気付こうともしなかったアンタ達が悪いんでしょ」
男子のそんな呟きに、美香が眉を寄せて苛ついたように言い放った。
「・・・いや、まぁ」
言われた男子達は一様にバツの悪そうな顔をしている。
「ねぇねぇ、瀬能君って宮野さんの前ではどんな感じなの?やっぱりクールで男前??」
「え・・・えぇっと・・」
急に匡のことを訊かれて、私はどう答えていいのか迷った。
“クールで男前”
そう表現した彼女の言葉に間違いはないけど、私に見せてくれる匡の素顔はそれだけじゃないから。
「そんなの2人だけの秘密でしょ」
またしても助け舟を出してくれたのは美香で。
ニヤッと笑いながら意味ありげな台詞で答えた。
「「「キャーッ」」」
と、そこでなぜか黄色い声を上げる女子達に、私はびっくりして言葉も出なかった。