眼鏡越しの恋
一限目の数学の先生が教室に来るまで、何だかんだと私の周りで騒いでいたクラスメート達。
先生の姿にみんながそれぞれの席に戻って、やっと静かになった。
教壇で先生が授業を始める中、私は一人深い溜息を吐き出した。
みんなの変わりようについていけない。
まだ一限目が始まったばかりなのに、私はぐったりと疲れていた。
今までと違う周りに落ち着かない時間を過ごしていた私は、お昼休みになる頃には、すっかり1日の体力を使い果たしていた。
美香と向かい合ってお弁当を広げるけれど、あんまり箸が進まない。
「そんなに疲れちゃって。適当に答えておけばいいのにイチイチ真面目に取り合うから」
机の上に突っ伏す私に美香が呆れた声で呟く。
「だって、質問されたら答えないわけにはいかないよ・・・」
「お人よし」
顔を伏せたまま答えた私に、美香は苦笑いして、子供にするように私の頭を撫でた。
時計を見るとお昼休みが始まって15分ほどたった。
いつも早々にお昼を食べ終える匡だから、そろそろ終わっている頃かな?
匡のことを考えたら、会いたくなった。
迎えに来てくれるって言ったけど、私から会いに行こうと思って、ほとんど箸の進まなかったお弁当の蓋を閉じた。
「もう食べないの?」
「うん、いいや。ちょっと行ってくるね」
「え、行ってくるって。瀬能君、迎えに来るって言ってたじゃない」
立ち上がった私をなぜか美香が慌てて引き留める。
「うん、でも行ってくるね」
「ちょっと、祥子!?」
どうして美香がそんなに慌てるのかわからないけど、私はそれを無視して教室を出た。
いつもは『行ってらっしゃい』って送り出してくれるのにな・・・。
私は不思議な気持ちで、2クラス先の匡の教室へ向かった。