眼鏡越しの恋
「祥子、ほら瀬能君来たよ!」
美香はプールの奥から出てきた数人の男子生徒達を指差しながら、テンションの高い声を上げる。
他の女の子達からも同じような黄色い声が上がって、私はそのテンションの高さに気後れしてしまった。
かなり自分が場違いな気がする。
ただ瀬能君が現れただけで、よくここまで、みんな盛り上がれるなと呆れてしまう。
でも、プールサイドを歩く彼の姿を見て、なんとなく納得できる気もした。
だって、瀬能君は私が見たってやっぱりかっこいい。
高い身長。
均整のとれた体格。
目鼻立ちの整い過ぎた綺麗な顔。
鋭い瞳さえ、彼の魅力の一つだろう。
彼に対して特別な感情のない私だって、彼が所謂、イケメンだと言うことはよくわかる。
それもかなりハイレベルのイケメンだ。
普段は無気力で何にでも冷めてるイメージの彼の別の一面が見える“水泳”は、彼のファンの女の子達には、特別なものなのかもしれない。
なんて、他人事の私は周りで騒ぐ女の子達の声を聞きながら、心の中で冷静に分析していた。
そう、この時までは本当に他人事だったんだ。
――――…その、瞬間までは。