眼鏡越しの恋
匡が足を止めたのは視聴覚室の前。
お昼休みは当然誰もいないその部屋のドアを開けて、匡は私を押し込んだ。
そのまま背中からギュッと抱き締められて、私は思わずピクッと体を震わせた。
ドキドキと速く刻む鼓動が静かな部屋に響いてしまう気がして、恥ずかしくて堪らない。
「祥子、あんまり心配させんな」
「・・・え?」
背中側から抱き締める私の髪に顔を埋める匡がボソッと呟いた。
その声がさっきまでのものとは全然違っていて。
心配げに焦れたような声に私は胸がキュッと掴まれたように甘く痛んだ。
「ごめんね、匡。・・・少しでも早く匡に会いたかったから」
匡の顔が見えない分、恥ずかしくて普段は言えない言葉も素直に言えた。
「・・・祥子」
「えっ、」
私の名前を呟いたかと思うと、匡は私をクルッと反転させた。
いきなり向き合う形になって、触れるほどの間近で顔を覗き込まれて私は目を見開いた。
「そんな可愛いこと言うと、我慢利かねぇ」
掠れた声でそう言って、匡は私の唇を甘く塞いだ。
「んっ・・・きょ、きょ・・う」
何度も触れ合うキスに段々苦しくなってきた私は微かなキスの合間に匡の名前を呼ぶ。
その声がなんだかやけに甘ったるく聞こえて、恥ずかしくなった。
「悪かったな。遅くなって」
唇を離した匡は私を抱き寄せて、優しく言った。
私は甘く響く匡の声に真っ赤になって、彼の腕の中で小さく首を振った。
迎えに来てくれるって言ったのに、待てなかった私が悪いんだから。
そう思って首を振る私の気持ちを察したのか、匡はクスッと小さく笑うと、私の髪にリップ音を立ててキスをした。