眼鏡越しの恋



「そういうことかよ・・・ふーん、それで見に来て何か変わったわけ?」


ムッとした顔のまま、瀬能君が私を睨む。
私はどうして睨まれているのかわからなくて、なぜか心が痛くなった。


この心の痛みの意味さえ、私には不可解だ。


「瀬能君がどれだけ真剣なのか、少しわかった気がする。瀬能君が泳いでる姿から目が離せなくなったから・・・それは瀬能君が本当に真剣に取り組んでいるからだよね」


「・・・・・・・・」


私の言葉に瀬能君は目を見開いて、息を呑んだ。


私ってば、何を偉そうに言ってるんだろう。
水泳に関してど素人で、瀬能君が泳いでるところだって、今日初めて見たばかりなのに。


こんな知ったかぶり、あり得ないよね。


瀬能君も気分を悪くしたのかもしれない。
だから黙ったままなんだろうか。


「ご、ごめんなさいっ。私、何も知らないのに余計なこと言って・・・」


「お前それ、計算?」


「へ?」


謝る私の声を遮った瀬能君の言葉もやっぱり意味不明だった。


さらに、そう言った瀬能君の顔がなぜかさっきより少しだけ赤い気がするのは、なぜだろう?


その後、なぜか瀬能君は無言になって、「はぁ」と溜息を吐いた。
私はその溜息の理由がわからなくて。
やっぱりさっきの言葉が気に障ったのだと思って焦る。



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