眼鏡越しの恋
「あの、ホントにごめんなさ・・・」
「いいよ。別に気にしてない・・・ってか、怒ってるわけじゃないから」
焦る私にクスッと笑った瀬能君の顔は、ドキッとするくらいかっこよかった。
「ああ、それからあの原稿チェック、明日でいいか?」
また突然変わる話の内容に、私は一瞬、何のことを言われているのかわからなくて。
それが今日、渡したインタビュー内容の原稿のことだと理解するのが一瞬、遅れた。
「あ、あれ・・・うん・・・大丈夫なんだけど・・・・・少し、内容変えたいって思ってるんだけど、いいかな?」
私は少し躊躇しながら、瀬能君に訪ねた。
「内容変える?別に俺は構わないけど」
「ありがとう。また明日、新しい原稿渡すから。面倒だけど、そっちをチェックしてもらえる?」
「ああ。でも、なんで?」
瀬能君が不思議そうに、でも私の目をじっと見て訊くから、私の鼓動はまたドキドキと鳴り始める。
「えっと、今日の瀬能君の泳ぎ見て、変えたいって思って」
「・・・ふーん」
瀬能君の鋭い瞳から目を逸らすことができずに、そう言った私に瀬能君はニヤッと口角を上げた。
その表情がどこか嬉しそうに感じるのは、私の気のせいだろうか。
いや、気のせいに違いないけど。
でも、普段は見ることのないそんな瀬能君の表情に、私の心はその時、完全に奪われたのかもしれない。