眼鏡越しの恋
瀬能君の顔は無表情だったけど、でも『サンキュー』とか、普段言わない人なのに。
というか、瀬能君から『おはよう』って誰かに声をかけるのすら、珍しい。
ましてやその相手が女子なら、なおさらあり得ないことなのに。
だから周りの信じられないと言った視線も、驚きの声も当然のことだったけど、私の耳には入らなかった。
その時の私はただ、瀬能君に対する自分の鼓動の速さに動揺していて、何も考えられずにいた。
これじゃ、まるで。
瀬能君のことを好きだと思ってるみたいじゃない・・・・・
湧き上がるその気持ちを、懸命に打ち消すので、精いっぱいだった。