眼鏡越しの恋


「ちょっと、祥子!聞いたよ。瀬能君に『おはよう』って言われたんだって?」


どこから聞いてきたのか、1限目が終わると美香がすごい勢いで私の席までやってきた。
私の前の席の椅子に座って、前髪とメガネの奥の私の目を探るように見ながら、ニヤリと笑っている。


「挨拶くらいするでしょ、瀬能君だって」


それがどれだけあり得ないことか、わかっているけどそう言うしかない。
でも美香もそれがあり得ないことなのは百も承知。
私の言葉になぜか意味ありげな笑みを深めた。


「瀬能君に限っては、それはないでしょ」


「・・・・・・・・」


そう言われては私は何も言えない。


でも、周りから聞こえてきた声に私は的を得た気がした。


『あの宮野さんだもん。瀬能君も女の子として意識してないんだよ。だから普通に挨拶したんでしょ、男子にするように』


廊下から聞こえてきたその内容に、私は妙に納得した。


そうか、女の子とほとんど話さない瀬能君も口数は少ないけど、男の子とは普通に話をしている。
私は女の子として見られていないから、男友達並みの対応だってことなのか。



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