眼鏡越しの恋


私はなんて取り繕っていいのかもわからず、ただあたふたとしてしまう。
そんな私を見て、瀬能君がクッと可笑しそうに息を詰まらせて表情を崩した。


・・・・・笑顔なんて、反則行為ですよ。


普段、良くも悪くも表情を崩すことのない瀬能君の笑顔は私の心臓を壊すのに、十分過ぎるほどの破壊力だった。


「宮野って思ったより天然?」


「は?・・・天然なんて、初めて言われたけど」


まさかの評価に私は思わず、素で答えてしまった。
瀬能君はますます可笑しそうに笑う。


これは私の都合のいい夢だろうか?


だって、瀬能君がこんなに笑う人だなんて、きっとほとんどの人が知らない。


どうして瀬能君は笑っているの?
いつも無表情で、水泳以外は無気力で。
誰の前でも冷めた空気を漂わせるアナタが・・・


どうして今、私の前でそんな風に笑っているの?


私は抑えても溢れてくる気持ちに、どうしていいのか本当にわからなくなっていた。


こんな気持ちは、初めてだから。
対処法なんて、知らない。



でも・・・この瀬能君の笑顔を私は知っている。


ずっと、忘れていたけど。


今、私の目の前で笑う瀬能君の笑顔を見て、私はずいぶん前の記憶を思い出した。




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