眼鏡越しの恋
彼との思い出




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あれはまだ1年生の頃。
瀬能君とは同じクラスだったけど、特別関わることもなくて。
瀬野君はあの頃からすごく人気があってモテていたけど、今と変わらず、あまり人を寄せ付けない雰囲気だった。
そんな瀬能君と同じクラスだと言っても、ただそれだけ。
それ以上でもそれ以下でもない、私達はただのクラスメートだった。


だけど、1度だけ。


私は瀬能君と近づいたことがあった。


放課後、日直だった私は同じ日直だった男の子に半ば押し付けられるようにして、学級日誌を任された。
書き終わった日誌を職員室に持っていこうと廊下を歩いていた時、私は誰かが置きっ放しにしたバケツに躓いて転びそうになったのだ。


あっと思った時には、ガランっと大きな音を立ててバケツに躓いていて足がふらついた。
でもそんな私の腕を、急に誰かに掴まれて・・・転ぶ寸前で助けられた。


びっくりして顔を上げると、そこにいたのは『クールでかっこいい』とみんなに噂されているクラスメートで。


そう・・・瀬能君が転びそうになった私の腕を掴んで助けてくれていたんだ。



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