眼鏡越しの恋
急にはっきりとする視界。
すぐ目の前には瀬能君のドキッとするほどの綺麗な顔があって、こんな時でも私の鼓動をドキドキと跳ねさせた。
「他のヤツの前でメガネ取るんじゃねぇぞ」
「何言って・・・」
瀬能君の言葉はまるで・・・
私は愚かな勘違いをしてしまいそうな自分に眉を寄せる。
瀬能君が言っている言葉を都合のいいように理解したいと思っている自分が怖かった。
「宮野・・・・・」
『~ピンポン~パンポン~・・・後5分で完全下校になります。校内に残っている生徒の皆さんは速やかに下校して下さい』
何か言いかけた瀬能君の言葉はスピーカーから聞こえてきた完全下校の時間を知らせる放送委員の声で遮られた。
私は椅子の上に置いていた鞄を手に取ると、逃げるように図書館から飛び出した。
瀬能君の私を呼ぶ声が背中に聞こえたけど、私は振り返ることなく、ただ必死に走ってそのまま校舎を出る。
何が起こったのか、どうしてこんなことになったのか。
なに一つ理解できなくて、走り続ける私は、ただグチャグチャに混乱した心に支配されていた。
瀬能君の言葉が私の頭の中で何度も繰り返し響いていた。
『お前は綺麗だ。他の女が霞むくらいにな』
『ホントのお前がものすごく綺麗だって知ってるのは俺だけでいい』
『他のヤツの前でメガネ取るんじゃねぇぞ』
瀬能君、私・・・・・勘違いしてしまうのが怖いよ。