眼鏡越しの恋
それだけじゃなくて。
宮野は『声だけはイイのに見かけが“残念”』なんて、理不尽なことを平気で言われている。
それは正直、俺でさえムカッとするほどみんな普通に言う。
その言葉が女である宮野を傷つけるなんて、みんな思っていないみたいに。
宮野だってそんな理不尽な評価をされて傷つかないわけない。
そう思うけど、アイツは決して何も言い返さない。
ただその言葉を何事もないように聞き流している。
俺は言い返せばいいのにと思うけど、宮野はそれをしない。
だから誰もそんな理不尽なことを言う自分達のことを悪いと思っていないんだ。
宮野が相手にそう思わせないようにしている・・・俺にはそう見えていた。
いつだって宮野は他人に罪悪感を与えない。
それは時にこっちが勝手にイラっとするほどで。
もっと自分の感情に素直になればいいと思うのに、そうしない宮野が大人なのか、いちいちイラっとする俺が子供なのか。
本当は疲れることだってあるだろうし、嫌なことだってあるはず。
あんな理不尽な評価をされて傷ついてないわけがない。
そんな宮野を守ってやりたいと思うなんて・・・勝手だろうか。
結局、2年間もただ見ているだけの俺なのに。
アイツとの距離を埋める打開策が見当たらなくて、何も踏み出せない俺はどんだけ情けない男なんだか・・・。