眼鏡越しの恋


でも・・・・・ちょっと急ぎ過ぎたか?


図書館から走り去る宮野を呼び止めながら、小さな後悔をした。


宮野と近づけたことに浮かれていたのかもしれない。
至近距離で見るアイツはやっぱり俺の心を乱れさせるほど綺麗で。
どうしてこんなに綺麗なこいつに誰も気づかないんだろうと不思議に思う。


まあ、誰にも気づかれない方が俺にとっていいんだが。


調子に乗って、宮野からメガネを外して、至近距離で見つめた。
長い前髪が少し邪魔に思えて、綺麗な顔をもっとちゃんと見たくて。
宮野の前髪に手を伸ばした。


サラサラした髪の感触が堪らなくて。


『綺麗なのに、勿体ねぇとか思わないの?』


とか。


『素顔のお前は美人だろ』


とか。


思わず、口にしていた。



でも・・・“美人”“綺麗”と言う俺の言葉に反応した宮野は、明らかにおかしかった。


何かつらいことを思い出しているように深く眉を顰めて、苦しそうな顔をした。


『・・・違う。私は美人なんかじゃない。私は・・・不細工だ』


そう苦しげに言った宮野に俺の心まで痛くなった。


何に怯えてる?


本当は誰よりも綺麗なのに、それを隠すのはそのせいか?



素顔の宮野を知る俺には不自然に思えるほど執拗にその容姿を隠すのも。
傷ついているはずの心を隠すのも。



その何かが原因なのか?




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