眼鏡越しの恋



瀬能君のインタビューまで、あと2日。
そろそろ本気で話をしないと、インタビューに間に合わないと焦りばかりが膨らむ。


瀬能君のことを考えながら、その日は委員長である戸田君と放送室で委員会の資料をまとめていた。


「そう言えば、瀬能のインタビューは大丈夫そう?」


資料をまとめながら、不意に戸田君に訊ねられた言葉に私はビクッと肩が揺れて、ちょうど飲んでいたペットボトルのお茶を零しそうになった。


跳ねたお茶の滴がメガネを濡らした。


「大丈夫・・・うん、大丈夫」


明らかに動揺して不自然な声と作り笑いになる。


動揺を隠すように、濡れてしまったメガネを外して、俯き加減でメガネについた滴をハンカチで拭いた。


動揺し過ぎて、戸田君の前だと言うのにメガネを外してしまったことにも気づいていなかった。


誰の前でも外したことのないメガネ。
私が人前でメガネを外したのは、瀬能君に外された時だけだったから。


「・・・・・宮野?」


不意に戸田君が不思議そうな声で私を呼んだ。
それに反射的に顔を上げた私は、霞む視界に『マズイ』と思った。


そこで初めて戸田君の前でメガネを外していることに気付いた。


「嘘・・・ホントに宮野?」


戸田君がびっくりした声を出して、私達の間にあった距離を縮める。
戸田君の顔がはっきりとわかるくらいの距離に、私は慌てて一歩下がろうと座ったまま突いていた手を後ろに下げた。



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