眼鏡越しの恋
“俺のモノ”
私の腕をぎゅっと掴んだまま早足で歩く瀬能君は、なぜかすごく怒っている。
瀬能君の怒りが私の目の前にある彼の背中からも伝わってきて、私はただ無言で彼についていった。
放課後で、誰もいない廊下をしばらく二人で無言で歩いて、瀬能君は空教室の中へ入った。
教室の中へ入ると、瀬能君は繋いだままの手をより強く掴んで私を引き寄せると、メガネのない私の顔へぐっと顔を近づけて、睨むように私の目を見た。
「なんで俺以外のヤツの前でメガネ外してるんだよ!」
繋いでいない方の手に持ったままだったメガネを取り上げて、瀬能君は怒鳴るように言うと、更に怖い顔で私を見つめる。
私はどうしてこんなに瀬能君が怒っているのかわからなくて、うまく言葉が出てこない。
「俺以外のヤツの前でメガネ取るなって言っただろ!!」
「・・・・・ごめん」
瀬能君の勢いに思わず謝って、でもなんで謝っているのかも私にはわからない。
「しかも触られてるし!あり得ねぇ」
瀬能君は怒りに任せるように乱暴にさっき戸田君が触れた私の頬に大きなその掌を重ねた。
「―――――っ」
瀬能君に触れられた頬が一気に熱を上げる。
戸田君の時は熱なんて上がらなかったのに。
ただ不快なだけだったのに、瀬能君だと熱いくらい簡単に熱が上がるし、心臓もあり得ないくらいの速さで鼓動を刻む。
「他の男に触らせてんじゃねぇよ」
私の目から視線を離さずに、睨むような強い視線で瀬能君はイライラとしたように言った。