眼鏡越しの恋
初めてのキスに私はどうしていいのかわからなくて。
でも重なる瀬能君の柔らかな唇がすごく優しくて。
私は瀬能君のシャツの裾をギュッと握りしめながら、初めてのキスに甘く心を痺れさせていた。
「祥子」
唇を離して、抱き締める私の耳元で瀬能君が掠れた声で私の名前を呼んだ。
初めて下の名前で呼ばれて、私はドキンと鼓動が大きく跳ねた。
自分の名前がこんなに甘く聞こえたのは初めて。
「瀬能君・・・・・」
「違う。瀬能君じゃなくて下の名前で呼べ」
「え・・・」
そう命令されて私は思わず固まってしまった。
下の名前って・・・。
「ほら、呼んでみ?」
腕の中の私を見下ろして、瀬能君が意地悪そうに目を細めてさらに要求する。
私は急にそんなことを言われても困ってしまって、視線を泳がせてしまう。
でも瀬能君は許してくれなくて。
私の逸らした頬に手を添えると、いつもの鋭い視線で私をじっと見た。
「うっ・・・・・きょ・・・」
「ん?」
言い淀む私を面白がっているように見える。
でも絶対言うまで許さないとその強い瞳が言っているから。
私は顔を真っ赤にして小さく彼の名前を呼んだ。
「・・・匡」
「・・・・・祥子、お前やっぱり反則だ」
え?と思う間もなく、私は瀬能君・・・匡にギュッと抱き締められて、甘い優しいキスを受け止めていた。