眼鏡越しの恋
「私、今度、前髪切るね」
匡の腕の中で照れ隠しに唐突に話し出した私に匡は一瞬、苦い顔をする。
その表情が以外で、私はあれ?と思った。
「前髪切った方がいいって、言ってなかった?」
図書館で匡に確か前髪はもう少し短くていいって言われたと思っていたんだけど、違ったんだろうか?
「ああ・・・言ったな。けど、俺は別にそのままでもいいけどな」
「そうなの?」
珍しく歯切れの悪い言い方をする匡に私は首を傾げて訊き返した。
そんな私に匡はバツが悪そうに眉を寄せると、私の顔にかかる前髪を指先で掬った。
「俺にとってはメガネや前髪で顔を隠してるお前も十分すぎるほど綺麗だし、可愛いから。・・・それに、前髪を短くしたらお前の素顔が他のヤツにバレる危険があるし・・・そのままでもいいんだけどな」
「・・・・・危険って。匡、考え過ぎだよ」
みんなに“残念”と評価される私の容姿を、そのままで綺麗だと、可愛いと言ってくれることがとても嬉しくて。
私の素顔を他の人に知られることを必要以上に心配している匡の気持ちがくすぐったくて。
私はクスクスと照れ笑いを浮かべて匡を見上げた。