眼鏡越しの恋


「あからさまにイラつかないでよ」


へらっと笑いながら言う言葉の裏に、明らかな敵意を感じる。
コイツも俺のことが嫌いなのは重々承知だ。
いつも物腰が柔らかそうに振る舞っているくせに、その内面はかなり腹黒いだろうこの男は、ここ最近、俺に対しての敵意を隠そうとしない。


その原因は確実に祥子のことだ。


放送室で祥子の素顔を見たコイツの前から祥子を連れ去って、わざわざ全校放送で交際宣言までした俺を快く思っていないんだろう。


快くどころか、祥子とそういうことになった俺が許せないってところか?


たぶん、コイツも祥子のことを・・・。


「わざわざ全校放送を使って交際宣言したのに、確実に裏目に出てるよね」


可笑しそうにニヤリと笑う顔も、刺々しいこの言葉も、マジでイラつく。


「うるせぇよ」


「あの宮野が相手なら自分の方が勝ってるってみんな思ってるみたいだよね」


「・・・・・・・・」


この言葉に俺は最大級に不機嫌な顔になって、目の前の男を睨みつけた。


「みんなホント、失礼だよね。宮野、かわいそうだな~」


「ああ?お前は何を言いたいんだよ、鬱陶しいな」


「いらない好奇な目とか、嫉妬とかそういう今まで宮野に無関係だった負の視線に晒されてる彼女を何とも思わないのか?わざわざ注目を浴びるようなことをした瀬能のせいだろ」


「・・・・・わかってるよ。って言うか、そんなことお前にイチイチ指摘される筋合いはない」


「あるよ。俺、宮野のこと好きだからね」


強い口調で言った俺の言葉なんかまったく意に介さない顔をして、しらっと当たり前のことみたいに言ったコイツに俺は盛大に眉を寄せて、睨む視線を強くした。


< 63 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop