眼鏡越しの恋
「お前なんかに祥子は渡さねぇよ」
「それを決めるのは瀬能じゃなくて、宮野だろ」
さっきまでのへらっとした表情を一転させて、真顔で言う男にイライラがさらに募った。
「祥子の素顔見て、態度変えたお前なんか・・・」
「俺は宮野の素顔を知る前から彼女が好きだったから」
「あ?」
コイツはある意味俺にとって爆弾発言に思えることをさらっと言った。
「放送委員でずっと一緒だったんだ。瀬能よりずっと近くで宮野を見てきて惚れないわけないだろ?」
「・・・・・・・・」
俺の中にザワッと嫌な感覚が湧いた。
さっきまで感じていなかったその感覚が無性に気に食わない。
俺よりずっと近くで祥子を見てきたと言うコイツに。
祥子の素顔じゃない部分に惚れてると俺に伝えてるコイツに。
今まで感じてなかった嫌な焦燥感を覚えた。
「瀬能は宮野の顔に惚れたんだろ?」
「違うっ!」
「本当に?宮野の近くにいない人間に宮野の良さはなかなか伝わらない。だったらあの素顔に惚れたってことじゃないの?今はどうあれ、切っ掛けはそうだろ?」
無意味に勘のいいコイツが本当にムカつく。
切っ掛けは・・・って言われて、すぐに反論できない自分自身がもっとムカつく。