眼鏡越しの恋
「ほら、反論できない。結局、瀬能も一緒なんだよ。自分の見かけに言い寄ってくる女に嫌悪感を持ってるくせに、瀬能も宮野の見かけに惚れたんだから」
「俺が祥子を好きなのは、見かけだけじゃない」
祥子の素顔に目も心も奪われたのは確かにそうだけど、この2年間、想い続けてきたのはそれだけじゃないとはっきり言える。
だけど。
なぜかコイツの言葉が心の中に棘みたいに引っかかった。
「宮野のこと、諦めるつもりはないから。一応、伝えておくよ」
目を逸らさず、睨み続ける俺を同じように強い視線で見据えて、はっきりとした口調で宣言した。
「戸田っ!お前なんかに渡すつもりねぇからな」
そのまま去って行こうとするその背中に、宣言い返した俺を一瞬振り返って、戸田は余裕そうに口端を片方だけ上げた。
「くそっ」
戸田が去って行った昇降口で一人になった俺は、沸々を湧く苛立ちを吐き出すように声に出して、乱暴に靴を履きかえて教室に向かった。