眼鏡越しの恋


「匡?・・・なんかあった?」


「あ?」


不意に祥子が心配そうに首を傾げて、大きな目を瞬かせながら俺を見た。


「なんかちょっとイライラしてる?」


瞬かせていた瞳で俺の目をじっと見つめる祥子の表情がどことなく不安げに揺れる。


「何でもねぇよ。そんな顔するなよ」


くしゃっと祥子のサラサラの黒髪を撫でて笑いかけると、祥子は目元を染めて困ったように眉を下げた。


「私じゃあ頼りないだろうけど、何かあったら言ってね。匡の力になりたいから」


「・・・・・・・・」


はっきりとした口調でそう言う祥子に驚いた。


頼りないわけないだろう。
何も言わないのに、俺のちょっとした変化にもすぐに気付いてくれるくせに。
俺の力になりたいって、お前はもうとっくに俺の“力”の源だよ。


「サンキュ・・・すげぇ嬉しいよ」


照れ隠しにかき混ぜるように祥子の髪をぐしゃぐしゃに撫でまわした。
乱れた髪を慌てて整えながら、祥子は真っ赤になって子供みたいに頬を膨らませて怒って見せる。


「もうっ、グチャグチャにしないでよ」


「グチャグチャでもお前は綺麗だろ?」


「なっ、何言って」


口角を上げてニヤリと笑った俺に、もっと真っ赤になった顔をキョロキョロさせて慌てる祥子がやっぱり可愛すぎて、俺はまた笑い声を上げた。


こうやって時々子供っぽくなるところも、妙に周りを気にして慌てるところも。


祥子の全部が愛しいと思った。


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