眼鏡越しの恋
「でもこのメガネじゃあ、体育どころじゃないわね」
「え・・・うわぁ!メガネ、壊れてるじゃん!ごめん、宮野」
美香が呟いた言葉に、中野君は今気付いたように、私の手の中のメガネを見て、大きな声を上げた。
その慌てぶりに、私は苦笑しながらまた首を左右に振った。
「私の不注意だったから。中野君は気にしないで」
「え・・・・・で、でも・・・」
合わない視点でもちゃんと中野君の顔を見て言わなければ意味がないから、顔を上げて笑いかけながら伝えると、中野君はまた不自然に言葉に詰まった。
「ぷっ、中野、アンタ照れ過ぎ。祥子の魅力に今更気づいても遅いっていうの」
み、魅力!?
美香の口からとんでもない単語が飛び出してきて、私はびっくりして隣の美香を振り返った。
美香はなぜかとてもご機嫌で、困ったように固まる中野君を見ていた。
「み、美香?」
「祥子、これじゃあ今日はもうバトミントンどころじゃないから、先生に言って見学してよ。ついでも私も見学にするから」
「え、えぇ!?」
美香はそこに立ち止まる中野君を放ったまま、私の手を引いて体育館の端にいる先生のところへ連れて行った。
私はボーっとしている中野君が気になりながらも、美香に手を引かれるまま、ついていくしかなくて。
その後もしばらく、中野君はボーっとしていた。
何か、悪いことしちゃったかな。
そう思いながら、ちゃっかり私と一緒に見学を決め込んだご機嫌な美香の話を聞いていた。