眼鏡越しの恋

体育の授業が終わって、私は着替えを済ませて教室に戻った。


フレームが曲がって、レンズも外れているから当然メガネはかけられない。
視界が歪んだままの世界って、なんだかとても気持ちが悪い。
周りの状況がはっきり見えないから、不安でドキドキするのも嫌だった。


更衣室で、他のクラスメートの女の子に、メガネをかけていないことを指摘された時の彼女達のびっくりした様子もなんだか私の中の不安を煽っていた。


『えぇ!?ホントにホントに、宮野さん?』


みんなから痛いくらいの視線を受けて、すごい勢いで訊かれた質問に戸惑いながらも頷くと、みんなは口を揃えて『えぇ―――!』と声を上げた。
どうしてこんな反応をされるのか、理解できなくて。
私はただ、居心地が悪くて、早々に着替えを済ませると、美香と一緒に更衣室を出た。


でも、その居心地の悪さは教室に帰ってきても同じだった。


歪んでブレた視界の先ははっきりとはわからないけど、教室にいた男の子達の視線がなぜか私の方へ向いているような気がして。


はっきり見えないから、意識し過ぎているのかもしれないけど。


でも、周りから浴びせられるような視線を感じて、私は美香と迎え合わせになりながら、居た堪れない気持ちでお弁当を食べていた。


「みんな、祥子の素顔にすっごい反応してるね!面白いっ」


「え・・・素顔?」


美香はお気に入りのミルクティの入った紙パックのストローを吸いながら、周りからの視線を楽しむかのように、ぷぷぷっと笑った。



素顔・・・


メガネをかけてないこの顔にみんなあんなに反応してるの?


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