眼鏡越しの恋
美香の言葉に唖然として、美香を見つめていると、美香は呆れたように一つ、溜息を吐いた。
「あのねぇ・・・瀬能君にも言われたんじゃなかった?祥子の素顔は綺麗だから誰にも見せるなって?」
「え・・・う、うん」
いきなり匡の名前が出てきて、私は赤くなる頬を意識しながら小さく頷いた。
「それって、こういう状況になるのがわかっていたからでしょ?メガネを外した祥子の素顔はみんなにこういう反応をされるほど、綺麗なの。このあからさまな視線の雨は、アンタのその素顔のせい!」
「・・・・・・・・」
確かに匡には、匡以外の前でメガネを外すなって言われている。
私の素顔は綺麗だから、誰にも見せたくないって。
余計な虫を寄せ付けたくないからって。
でもそれは、何と言うか・・・惚れた欲目的なことで。
私は実際はそんなことないと思っていた。
匡に綺麗だとか可愛いだとか言われるのは嬉しいけど、他の人にそういう風に思われるなんて、まったく思っていなかったんだ。
こうして実際にみんなに驚かれて、美香に指摘された今も、正直、よくわからない。
ただ、美香に言われて不味いと気付いた。
匡との約束・・・
匡以外の前でメガネを外さないという、匡との約束を破っているこの状況が、とてつもなく不味いんじゃ?
そう気付いた私は、すぐにでも匡に会いに行きたくなった。
匡が他の誰かから、私のこの状況を聞いてしまう前に。
ちゃんと自分の口で説明しないと!
思い立った私は、善は急げとばかりに、食べかけのお弁当を閉じた。