眼鏡越しの恋


side匡



昼休み、俺は珍しく一人じゃなかった。
同じ水泳部だった隣のクラスの友達、瑞浪司(ミズナミツカサ)がふらっとやってきて、俺の前で一緒に昼飯を食べてる。
司は時々、こうしてふらっとやってきて、他愛ない話をしていく。
俺は相槌くらいしか打たないのに、司はそれを気にすることもないから、俺としても気楽に付き合える。


今日も好物の焼きそばパンを頬張りながら、司はくだらない話をしていた。


司の話に相槌を打っていた俺は、教室のドアの方から、聞き慣れた澄んだ声がしたのに気付いて、視線をそっちへ向けた。


え・・・・・あぁ!?


思わず、ガタンッと音を立てて、椅子から立ち上がってしまった。


教室の後ろのドアから中に入ってくるソイツ・・・祥子の姿に目を疑った。


祥子はドアの近くにいた男子にぶつかりそうになって、『ごめんなさい』と慌てて謝りながら、その横を通り過ぎて、俺の方へ向かって歩いてきてる。
でもその足取りがおぼつかない。


そりゃ、そうだろ。
視力が弱くてメガネがなきゃ、周りがよく見えないのに、今、俺に向かって歩いてきてる祥子はそのメガネをしてないんだから。


・・・って、待て!


なんで、メガネかけてないんだ!?


しかも、いつも目元を隠している前髪が、なぜかピンで留められていて。
祥子の顔が・・・その誰よりも綺麗な素顔が丸わかりじゃねぇか!!


祥子とぶつかりそうになった男が「え?」という顔をして、横を通り過ぎた祥子を凝視している。
その男の顔が赤くなっているのが、めちゃくちゃ気に食わない。


俺に向かってくる祥子を男も女も、教室中の奴らが驚いた顔をして見ている。


今すぐに抱き締めて、俺の胸の中に祥子を隠したくて堪らなくなった。

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