眼鏡越しの恋
「あのね・・・4限目の体育の時に、クラスの男の子とぶつかって・・・壊れちゃって」
俺の質問に祥子はまた困ったように眉を下げて、小さな声で説明すると、制服の胸ポケットからメガネを取り出した。
俺に見せるように掌にのせた赤い縁の祥子のメガネは、フレームが少し曲がっていて、レンズが片方、外れている。
しかもその外れたレンズは少し欠けていた。
「これは、見事にイッたな」
その散々な状態に、思わず苦笑いが漏れた。
祥子は眉を下げたまま、少し涙目になって、「ごめん」と小さく呟いた。
「ばぁーか、そんな顔すんな」
俺が他のヤツの前でメガネを取るなっていったのに、こんなことになって。
そのことに対する『ごめん』なんだろうとすぐにわかった。
体育の時にぶつかって壊れたなんて、不可抗力だ。
祥子が悪いわけでも、ぶつかったヤツが悪いわけでもない。
ちゃんとそれはわかってるって、涙目で大げさに落ち込む祥子に伝えたくて、俺はできるだけ柔らかく笑って、祥子の髪をくしゃっと撫でた。
祥子は顔を赤くさせて、余計に困った顔をして大きなその瞳に涙を溜めた。
涙目で俺を見上げるメガネなしの祥子の威力は半端ない。
思わず、抱き締めたくなったけど、さっきからずっと教室中の視線が痛いくらいに背中に突き刺さっているから、ぐっと我慢した。
その代り、涙の溜まった祥子の目元を涙を拭うように指先で撫でた。
「前髪はなんで上げてるんだ?」
目元に指を滑らせながら訊ねた俺に、祥子は更に顔を真っ赤にさせた。
指先に感じる祥子の明らかに上がった体温が心地いい。
「えっと・・・美香が、メガネがなくて見えにくいのに、前髪で視界を遮ってたら余計に危ないだろうってピンで留めてくれて」
・・・・・久保のヤツ、祥子の素顔がバレるのを承知でやったな。
俺の質問に祥子はまた困ったように眉を下げて、小さな声で説明すると、制服の胸ポケットからメガネを取り出した。
俺に見せるように掌にのせた赤い縁の祥子のメガネは、フレームが少し曲がっていて、レンズが片方、外れている。
しかもその外れたレンズは少し欠けていた。
「これは、見事にイッたな」
その散々な状態に、思わず苦笑いが漏れた。
祥子は眉を下げたまま、少し涙目になって、「ごめん」と小さく呟いた。
「ばぁーか、そんな顔すんな」
俺が他のヤツの前でメガネを取るなっていったのに、こんなことになって。
そのことに対する『ごめん』なんだろうとすぐにわかった。
体育の時にぶつかって壊れたなんて、不可抗力だ。
祥子が悪いわけでも、ぶつかったヤツが悪いわけでもない。
ちゃんとそれはわかってるって、涙目で大げさに落ち込む祥子に伝えたくて、俺はできるだけ柔らかく笑って、祥子の髪をくしゃっと撫でた。
祥子は顔を赤くさせて、余計に困った顔をして大きなその瞳に涙を溜めた。
涙目で俺を見上げるメガネなしの祥子の威力は半端ない。
思わず、抱き締めたくなったけど、さっきからずっと教室中の視線が痛いくらいに背中に突き刺さっているから、ぐっと我慢した。
その代り、涙の溜まった祥子の目元を涙を拭うように指先で撫でた。
「前髪はなんで上げてるんだ?」
目元に指を滑らせながら訊ねた俺に、祥子は更に顔を真っ赤にさせた。
指先に感じる祥子の明らかに上がった体温が心地いい。
「えっと・・・美香が、メガネがなくて見えにくいのに、前髪で視界を遮ってたら余計に危ないだろうってピンで留めてくれて」
・・・・・久保のヤツ、祥子の素顔がバレるのを承知でやったな。