眼鏡越しの恋
と言うことで、私はお昼休みに瀬能君のクラスを訪ねようとしていた。
インタビュー内容の原稿をチェックしてもらうために。
私の教室の2つ向こうが瀬能君の教室。
その教室の前だけ女子率が高い。
廊下から中を覗く女の子達の視線はみんな一点に集まっていた。
そこには教室の一番後ろの席で、椅子の背もたれに体重をかけてもたれ掛り、足を組んで目を閉じている瀬能君がいた。
うわっ、『近寄るな』っていうオーラが半端ない。
瞼を閉じたその顔もものすごく整っていて、かなりかっこいいけど、無言で醸し出すそのオーラが半端なくて。
あまりそういうことを気にしない私ですら、近寄るのを少し躊躇してしまった。
でも、原稿をチェックしてもらわなければインタビューの打ち合わせもできないから。
私は軽く息を吐いて意を決するように教室の中に足を踏み入れた。
「・・・あの、瀬能君」
瀬能君の席の前まで来た私は、目を閉じたままの瀬能君に声をかけた。
その声が若干小さかったのは、私の緊張の表れだったのかな。
瀬能君の前に立った私の背中に、廊下や教室にいる女の子達からの鋭い視線が突き刺さるのを感じた。
『ちょっと誰、あの女?』
『あれ、放送委員の宮野祥子じゃないの?』
『あの見かけで瀬能君に話しかけるとか、信じらんない』
あちらこちらから、小声だけどしっかり聞こえる言葉の数々。
瀬能君に話しかけるのに、見かけが重要だったとは、初めて知った。
私はそんな声を無視して、返事を返さない瀬能君にもう一度、同じように声をかけた。