眼鏡越しの恋
「教室まで送ってく」


「え、大丈夫だよ。それくらいの距離、一人で歩けるから」


「いいんだよ。俺が送って行きたいんだから」


遠慮する祥子を周りの視線からかばうように抱き寄せて、俺はそのまま有無を言わさず、教室を出た。


廊下に出て、予想通りの状況に更に苛つきが増した。


2クラス先の短い距離なのに、祥子に向けられる視線の数が半端ない。
通り過ぎる奴らがみんな、祥子の素顔に驚いていて。
顔を赤くして祥子を見つめる男子達を一人一人蹴りたくなった。


祥子の素顔がバレたらこうなることは想像していたけど、ここまでとは、マジで我慢できねぇ。


吐き出したくなる溜息をぐっと我慢して、祥子の教室へ向かった。


俺が溜息を吐くと、祥子が勘違いするから。
こうして祥子を送って行くことも、放課後、一緒について行くこともきっと俺が無理をしてるって、祥子なら思いかねない。



祥子に遠慮なんてさせたくないし、俺がしたくてやってるんだから。


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