眼鏡越しの恋
だって、こんな些細なことで照れる匡が可愛い。
可愛いなんて言ったら、匡は怒るだろうけど。
普段の匡とは全然違う表情がすごく新鮮でドキドキするくらい、やっぱり可愛い。


しかも私が後ろからついて行くよりも、隣を歩いてほしいだなんて・・・


嬉しくて、幸せな気持ちに満たされて、私は顔が緩むのを止められない。


「だから、笑うなって・・・ったく」


「ごめんね?だって・・・なんか嬉しくて、ふふっ」


緩んだ顔で謝っても説得力はないだろうなって思っても、溢れてきてしまうものは仕方ない。


「・・・しょうがねぇなぁ。ほら、行くぞ」


照れ隠しなのか、呆れたように溜息を一つ吐いて、匡がグイッと繋いだままだった私の手を引き寄せた。
前のめりになった私を、一瞬だけ、ギュッと抱き締めて、匡は何事もなかったかのように歩き出した。


「・・・・・反則」


「あぁ?」


抱き締められるなんて思ってもみなかった不意打ちに、私は真っ赤になった顔で隣の匡を見上げた。
そんな私をニヤリと意地悪そうに口角を上げて見下ろす匡は、さっきまでの可愛さなんてすっかり消していて、いつもの匡に戻っていた。


匡に手を繋いでもらって、二人で並んで歩きながら、ショッピングセンターを目指す私は、やっぱりどこかふわふわしたような、甘い幸せな気持ちでいっぱいだった。


こんなに甘くて幸せで穏やかな気持ち・・・


匡と一緒にいるだけで、そんな気持ちで私のすべては満たさせていた。



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