眼鏡越しの恋
「これは今すぐには直らないかも。祥子は度がキツイからレンズも取り寄せになるかな・・・確認してみるか」


彼はそう言って席を立った。
匡と二人だけになった空間で隣をちらっと盗み見ると、匡はものすごく不機嫌なオーラを放っていて。
顔は無表情だけど、それが更に彼の不機嫌さを表しているから、声をかけるのも躊躇してしまう。
それでも、と思って口を開きかけた時、奥に行っていたその人が戻ってきた。


「やっぱりレンズ、取り寄せになるね。どうする?いっそ、買い直すか?それともこれを機会にコンタクトにするとか」


「コンタクトは合わないって知ってるでしょ」


私のその返答に隣の匡がピクリと反応した。


・・・今の言葉、何かいけなかった?


「ドライアイか?でも今はドライアイでも使えるレンズあるよ。お前が試したのってずいぶん前だし、試すだけ試してみたら?」


彼のその言葉にも匡はなぜかムッとしたように、不機嫌なオーラを増長させた。


「ねぇ、キミもメガネよりコンタクトの方がいいって思うよね?」


そんな不機嫌さの半端ない匡に向かって、突然質問した目の前の男に、私の方がギョッとしてしまう。


「・・・別に。祥子はメガネでも十分だから」


いきなり矛先の向いた匡は迎え合う彼をじっと見据えたまま、低い声で答えた。

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